Voyager

帰り道
見上げた月があまりに明るくて

ちっぽけな自分のことなど
簡単に見通されているようだった

でもそんなふうに感じたのは

ちっぽけなくせに自分では見えていないから
もし見通しているのなら教えて欲しい

と、心のどこかで月に頼ろうとしたせいかもしれない

そう気づいた瞬間
月はやんわりと雲の後ろへ行ってしまった

やっぱり見通されていたらしい
 
OKサインの輪っかから未来を覗くとき

片目をつむるのが下手っぴだから

いつも「にっ」ってはにかんだような顔になる

ってやりながら説明するのは恥ずかしいから

ちょっと一緒にやろう

これならOKがふたつで

笑顔もふたつ
 
人生にはいくつもの信号があって
見渡す限り常に赤信号だ

何故ならそれは全て押しボタン式で
自分で押さないと青にはならない

それにいくつかの信号は
青に変わるまでかなり時間がかかるだろう

でもどの信号も
押しさえすればいつか必ず青になる
 
   

長いときを経て秘めてきた想いは

一瞬のゆらめきとともに加速し

大地をも染め上げながら

やわらかに昇華していった
 
いつも聞いてもらってばかりなので 今夜訊きに行きます

 
嫌味なことしか口に出せず

まるでナイフを振り回す幼い少年のよう

気づくのはいつも

振り回してしまったあと

ナイフがいきなり花になんて

変わらなくていいから

せめてもの氷になって

握ってるうちに溶けてしまえばいい

願わくば

溶ける余地のある氷でありますように

そしてそのとき生まれた雫で

小さな花が潤いますように
 
昼間の青いシャツから

夜の蒼いローブへと変わり

やがて僅かな時間だけ

深く白いドレスを纏う

夜でも朝でもないその空にとって

ドレスの白さだけが

果たしてアイデンティティだったのか

決して高貴ではなく

しかし何をも寄せ付けることのない白

それは始まりと終わりの交差

それは動と静の混沌
 
抱えきれなくなったら

それでいくつかお団子を作って

近くの誰かに「おすそわけ」

おすそわけは楽しいことだけ?

そんなこと誰も決めてない

辛いことこそおすそわけ

もらってうれしいおすそわけ
 
なんか、いいんです

「何が?」って訊かれると困るのだけど

なんか、いいんです

無色透明で無味無臭だけど

なんか、いいんです

なんか、いいでしょう?
 
入道雲のソファでまどろみ

セピア色の孤独を彷徨い

幼い夕立に目が覚めると

セピア色の空が広がっていた

その空の色はどこかで見た気がしたが

どこで見たのかは思い出せなかった
 


迷わず まっすぐ
 

      

魔法にかけられたかのように

私も雲も

そわそわしている
 

   

どこまでも どこまでも
どこへでも どこへでも
 
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  • Author: いじゅ
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